学びの特色

言語技術の授業例

言語技術で学ぶこと

最初は「問答ゲーム」という、質問に対して根拠に基づいて答える、簡単なやりとりから始めます。ゲームというくらいですから、ルールがあります。生徒たちはこのルールに沿って問答を繰り返す中で、段階的にコミュニケーションの基本を身につけ、理解していきます。こうして身につけた基礎の上に、レンガを積むように一つひとつの技術を順番に積み上げていきます。授業は全て議論によって実施され、毎回作文によって終結します。最終的には、洗練された構造を持つ小論文が書けるレベルにまで持っていきます。

『物語の形に慣れ、書く力を
鍛える(再話)』

この授業ではまず、短い物語を教師が読み上げます。生徒はそれを注意深く聞き、素早くメモしていくことを通して、必要な情報を聞き取る力とメモを取る速記の力を鍛えていきます。その上で生徒は設定された時間内に、聞き取った物語をメモを手掛かりにして原稿用紙に再現します。このことを通して、生徒は短時間にまとまりのある文章を書くことに慣れていきます。また、様々な物語の再話を行うことで、一般的な物語に共通する物語の構造の基礎を無意識的に学んでいきます。

『絵に込められたメッセージを
読み解く(絵の分析)』

この授業では、教材として絵を扱います。この授業の目的は分析力と論証力をつけることです。1枚の絵について、まずは全体に何が描かれているかを見ていきます。続いて、場所はどこか、季節はいつごろか、時間は何時頃か、誰がいるか、何が起こっているか、議論をしながら絵を詳しく見ていきます。問いにそって絵の細かい点に注目することで、分析力が身につきます。また、絵についての意見を述べることで論証力の鍛錬にもつながります。絵の分析は、どこに何が描かれているか皆ですぐに確認でき、議論できるので、生徒たちにも人気の授業です。

『一冊の本を読み解く(丸本)』

この授業では、ヤング・アダルト向けの小説や、シェイクスピア作品をはじめとした世界の名著をまるごと一冊、教材として使用します。これを物語の構成や登場人物の人間関係、舞台の社会背景など、さまざまな視点で読み解いていきます。 生徒たちは、自分が発見したことや考えたことを、きちんと根拠を示しながら発表します。こうして「自分の考え」を話せることが楽しいようで、授業はとても活発です。技術は、実際に使ってこそ身につくものです。言語技術は、「技術」の呼び名に相応しいシステマティックなカリキュラムに基づいて、生徒と教師が一緒になって授業を作り上げる中で身についていくのです。

『自分達の力で問を立て、議論をする(ソクラティック・セミナー)』

言語技術では、欧米の国語教育の中で実践されている「ソクラティック・セミナー」という生徒主体の議論を文学作品の分析授業の中で取り入れています。この議論では先生が問いを立てて生徒に考えさせるのではなく、生徒自身が「大きな問いをブレークダウン」して考えたオープン・クエスチョンをクラスで共有し、その問いについて自分達の力だけで(但し、学年やレベルに応じて教員が助言をすることもある)エビデンス・ベース(本に書かれた事実に基づいて)の議論をします。このソクラティック・セミナーは2年次(中2)から導入としてスタートしますが、知識・教養・経験を深めた4年次(高1)には大人が驚嘆するほどの深い議論が出来るようになります。